【限定無料公開】東京五輪スケートボード日本代表早川コーチが語るスポーツの本質 #02

東京2020で新たに採用されたスケートボード。競技中にも関わらず相手を励まし称え合う姿はスポーツの本当の価値を教えてくれた。輝かしい結果に導いたスケートボード日本代表コーチ早川大輔氏が伝えるスポーツの本質、新時代の指導像とは?(全2部構成の後編#02)

【目次】

  • 輝かしい結果を築いたポイントとは
  • オリンピックでの戦略について
  • 選手のモチベーションの上げ方とは
  • 選手の活躍について
  • 海外と日本の違いについて
  • オリンピックでのコーチの役割とは
  • スケーター達に伝えたい事
  • オリンピック後の周りの反響
  • 大切にしている言葉とは
  • 勝つ為に大切な事とは
  • 自身にとってスケートボードとは
  • 指導者に伝えたい事

▼【本編動画】

“できる”“乗れる”を100%信じ込ませる

──東京2020で結果が出たポイントとは?

いろいろ経験してきて失敗も重ねた上で、覚えた考え方なんですけど、ゴールというか、最終的なイメージから逆算して、今何やるべきかっていうのを考えるようになっていて。

その設定を一旦このオリンピックでの成績ってことを考えると、頭の中である程度逆算して、コンテストに目標を決めて、そのコンテストに勝つためには、誰々だったらこれぐらいのトリックをこんぐらいやった方がいいとか、細かいところに落とし込んでいくんですけど、それがこの中で1年延びたことによって、少し余裕ができて、それを伝えてた選手たちもそれぞれさぼらずに頑張ってくれって。

ストリート女子で銅メダルを獲得した中山楓奈(左)金メダルを獲得した西矢椛(真中)

中には順位が逆転するぐらい伸びた子もいるし、そういう形の細かい日々の設定だったり、次の大会ではないぐらいに入ろうという設定がまあまあうまくいってたと思うんですよね。

最終的に、直前の世界選手権で本当にランキングが全部出て、オリンピックに出る選手が決まるっていう大会で、ものすごく日本人の選手が活躍してくれて、すごくいい状態で本番に臨めるっていうタイミングだったので。逆算の計算的にはすごくちょうどいいというか合ってた。

そこまでの考え方とか、アイディアで持っていったっていうのが、メダルに繋がったポイントかなって、今思います。

──試合への向き合い方や戦略

オリンピックのルール上、ストリート(種目)は特に戦略が必要で、でもそれって、やる前とか試合仕上げとかもコンテスト後だと、出てる選手本人もある程度分析して理解はできるんですけど、実際練習に入った段階から、このコンテスト終わるまでは、自分のコンディションだったりトリックとの向き合い方っていうのを取るのが精いっぱいで、多分やってる間戦略ってなかなか計算できないし難しいんですよ。

相手が相手というか、他の選手たちのコンディションだったり成績もあることなんで。だからそこは、過去のコンテスト映像僕も見直したりとか、出てくる選手がどういうトリックを持っててどういうふうに考えて滑ってくるとかっていうのを細かく勉強して、日本の選手がどうやったらやりやすくできるか。

実力を100%出し切れるかっていうのを、わかりやすい言葉で伝えるっていうのが、僕の戦略というか大事にしてる部分です。

──モチベーションを上げる為に必要な事とは?

もう完全にモチベーション上げるのは“できる”“乗れる”を100%信じ込ませることですね。

もちろん見ててバランスがおかしければ、ちょっとこっちから見てて軸がずれてるから、そこだけ気をつけなとか、もう少し早く首曲げておけばそのレールが早く見えるよとか。

そういう細かい本人ではわからないアドバイスはもちろんした上で、でもそれだけやれば“絶対乗れるから”“100%乗れるから自信持って行ってきな”っていう感じでやってもらいます。

完全に僕はミスするって思わないから。絶対本番で乗ってるしかイメージしないんですよ僕も。
その選手がパンパンって乗ったっていう姿しか想像しないようにしてて。

絶対できるだろってミスするなんてないし、考えられないっていう状態で、絶対乗れるでしょって言うから、多分本人もあのれるんだっていう暗示かかるんじゃないすかね。それぐらいの勢いで絶対乗れるっていうのは自信持って言います。

僕は選手に憧れてるいちスケーター

──スケートボードという競技でのコーチとしての立ち位置とは

完全に指導者ではなくて、スケーターの1人として、スケーターがスケーターを見てどう思うかっていう感覚を伝えるっていうのが一番大事なことで。

出てくるアイディアもそうですし、方向性もそうですし、スケーターがスケーターを見てかっこいいって思う部分だけを伝えるようにしていて。

年齢的にどうしても年上なんで、そういう部分は仕方ないんですけど、基本的にスケーターとして、僕上から物は言わないです。

はっきり言って僕よりかっこいいし、うまいスケーターなんで。何か喋るときは絶対リスペクトを持って話すようにしてます。だから、僕は選手に憧れてるいちスケーター。

常にそういうふうに思ってます。完全にビッグファンですね、憧れしかないです。

──これからスケートボード始めようとしてる人たち、トップを目指す選手に伝えたい事はありますか

一番大事なことは、スケートボードを楽しんで、何よりも大好きになることですね。それがなかったら続かないし、スケートボードを難しく感じてしまうと思うんですよ。

オリンピック選手になりたいとか、有名になりたいとかいろいろ目標はあっていいと思うし、大きい夢を見るのはすごく大事なことだと思うんだけど、まずそこを頑張るために必要なのがスケートボードを大好きになること。

これがなかったら、スケートボードで何か夢を叶えるっていうのは絶対あり得ないと思います。だから、まずスケートボード楽しんで本当に大好きになってくれれば、もうスケートボードの夢は何でも叶うんじゃないかなって思います。

100%本当に好きだから頑張れるっていうのをもうちょっと意識した方が楽しいんじゃないかなって思う

──早川コーチが思うスポーツ界が抱えている課題とは?

今回オリンピック終わって一番多かった声がスケートボードって国とか関係なく、個人のものとしてみんながみんなを讃え合って。自分の出せるものを出せば、成績に関わらず、なんかこう満足できるというか。

みんな笑顔で素晴らしい雰囲気だよねっていうのが多かったんで、スポーツっていうか、競技でも何でもそうなんですけど、その感覚、逆になかったのかなって思って。

ちょっと僕も戸惑った部分があるんで、なんかみんな好きでやってたんじゃないのかなっていうか。何のためにそんなに死ぬほど努力して一生懸命悩んで、頑張って乗り越えてんだろうっていうのが、
僕が見えたんで。

そういう部分でちょっとスケートボードのカルチャーとかマインドを知ってもらって。もちろん競技になれば順位がついちゃうものなんで、勝つっていうことを目標にしてもいいんですけど。

その前にやっぱり自分が好きでやってることに対して100%本当に好きだから頑張れるっていうのをもうちょっと意識した方が楽しいんじゃないかなって思うんですよ。

やっぱり楽しければ自分で自発的にどんどんやるし、いろんなアイディアも出てくるし、教えられるんじゃなくて自分から湧き出てくるものでエネルギーに変わると思うんで。

他スポーツとか競技でも、やる選手自体がそう思って湧き出てくれば、もっとすごい成績にもなるだろうし、スポーツ界も盛り上がるだろうし、お金とか名声とかっていうよりも、意味のあるものに変わるんじゃないかなって思います。

──努力を実らせるために必要なこと

僕はスケートボードをしてる上で努力というか、好きなことをやる。全力でできるパワーというか、モチベーションが、おそらく努力なんで、努力とは思ってないですね。

本当に好きなことに没頭する。好きなことに全力できるモチベーションが努力ですね。

──勝つために必要な事は

まず勝つ負けるっていうのが、対相手とか他の選手とかではなくて、スケーターって今の自分に
次の瞬間勝てるかどうか。

自分がアイディアがあって、こうしたいっていう思いを、そのスケートボードで表現するんですけど、それをイメージ通りにやれるかどうか、できるかどうかっていうのが常に自分越えの瞬間なんで。

勝つか負けるかって言ったら、本当今の自分に、次の瞬間、勝つか負けるかだけだと思うんですよ。ほんと自分との勝負ですね。

──早川さんにとってスケボーとは

僕にとってのスケートボードは、
生きざまですね。

早川大輔(はやかわ・だいすけ)

東京生まれ。日本オリンピック委員会スケートボード日本代表コーチとして活動。東京2020では少年時代からサポートを続ける金メダリスト堀米雄斗を含め、日本代表を計5個のメダル獲得へ導いた。

撮影・天野大地

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